更新 2015.5.6 20:31閲覧 12892

Inkscapeでの画像の作り方(その1)

今回の課題は、Inkscape のベジェ曲線とペンツールとを組み合わせて、より手書きに近い雰囲気を再現すること。各機能を用途に応じて使い分ければ、最小限の労力で手書きに近い仕上がりが得られた。(作成日: 2007年10月 5日 (金曜日) 11:20:41 AM)

0a. 環境

  • Power Mac G4 Quicksilver 733Mhz
  • Mac OS X 10.4.10
  • メモリ 1.5GB
  • Inkscape 0.45.1
Mac OS X 10.4.10 に X11 と Xcode と Fink をインストールしてから、Gimp の日本語入力と Inkscape のメニュー日本語化及び日本語入力を可能にする一番簡単な方法。の手順で日本語を入力できるようにしておく。

0b. 作成のポイント

サンプルとして左図の画像を作成する。

手順

  1. 用紙設定
  2. レイヤーを作成
  3. 画面を拡大する
  4. ベジェ曲線によるオブジェクト(図形)の作成
  5. オブジェクト(図形)の色と線を設定する
  6. オブジェクト(図形)の拡大縮小と回転
  7. オブジェクト(図形)のコピーと鏡面反転
  8. カリグラフィ線で絵を描く
  9. 文字を入力する
  10. 画像の原本を保存する
  11. JPG 等のビットマップ画像で出力する

1. 用紙サイズの設定

Inkscape を起動。画面上の「ファイル」メニューより「新規/デフォルト」を選択する。

最初に用紙サイズを設定するので「ファイル」メニューの「ドキュメントの設定...」を選択して、「ドキュメントの設定」パレットを表示させる。

変更する場所は、「ページ」タブ内の『カスタムサイズ』フィールドにある『幅(W):』と『高さ(H):』である。

単位は px、pt、pc、mm、m、in、ft、cm の中から選択することができる。今回は 180 × 220 px に設定。

2. レイヤーを作成

用紙サイズが決定したら、レイヤーを作成する為に「レイヤー」メニューから「レイヤー...」を選択して「レイヤー(S)」パレットを表示させる。

今回はレイヤーを2つ作成して、レイヤー1に背景、レイヤー2に猫の輪郭を描いた。

レイヤーを追加する方法は、「レイヤー(S)」パレットの左下にある「+」ボタンをクリックして、「レイヤーを追加」画面を表示させてから、レイヤー名に「faceline」などと入力し、「追加」ボタンを押す。

今回の制作例に限らず、レイヤーの状態は絶えず参照する為、レイヤーパレットは常に表示させておく方が作業し易い。

3. レイヤーパレットの解説

各アイコンの説明

レイヤーの表示/非表示

レイヤーの編集可/編集不可

新規レイヤーを作成

現在のレイヤーを最前面へ移動

現在のレイヤーを1つ前面へ移動

現在のレイヤーを1つ背面へ移動

現在のレイヤーを最背面へ移動

レイヤーを削除

4. 画面を拡大する方法

ツールバーの中央付近に「虫眼鏡に関連するアイコン」が3つ並んでおり、左から順に「選択範囲」「描画全体」「ページ全体」と拡大を行うことができる。

右端の「ページ全体」アイコンは、『1. 用紙サイズの設定』で設定した用紙全体を画面一杯に拡大することができる。

画面右下にもズーム機能があり、こちらは「%の値」で拡大縮小を指定することができる。

適宜な大きさに拡大することができたら、画面左列にあるアイコンの上から9番目をクリックして「ベジェ曲線/直線を描く」を選択する。

5. ベジェ曲線を使ってオブジェクト(図形)を描く

左図で印に振ってある数字の順番通りにクリックしてオブジェクト(図形)を作成する。図形を描く際には、始点と終点のノード(点)を重ねて「くっつける」ことが肝要。

始点と終点を確実に「くっつける」コツは、終点をクリックする際に始点ノード(点)が赤くなっているのを確認してから、マウスの指を離すことである。また、図形を「くっつける」のではなく、直線にしたいときは、終点でダブルクリックするとよい。

左図の印は、ベジェ曲線の端点となり、Inkscape では「ノード」と命名している。
*同じ機能を Adobe 社の Illustrator では「アンカーポイント」としている。

尚、今回の解説では初心者にも分かり易くする為、「オブジェクト(図形)」や「ノード(点)」のようにカタカナ語の横に漢字を併記した。

6. オブジェクト(図形)の形を整える

図形を選択した状態で、左端の虫眼鏡アイコン「選択オブジェクトをウィンドウに合わせるようにズーム」をクリックすると、オブジェクト(図形)自体が画面一杯に拡大されて見易くなる。

次に、頬から顎にかけてのラインに丸みを持たせる為、画面左列の上から2番目にある「パスのノードまたはコントロールハンドルを編集」アイコンを選択する。

図の『□7』位置にあるノード(点)をクリックし、ツールバーの2段目にある「選択ノードの種類をシンメトリックに」アイコンを選択すると「コントロールハンドル」と呼ばれる青い線が現れ、鋭角の直線からノード(点)を中心とした左右対称の丸みを帯びた曲線などに修正することができるようになる。

7. ノード(点)とコントロールハンドル(青線)とオブジェクト(図形)について

ノード(点)を中心に2方向へ伸びている青い線は、ベジェ曲線で線形や方向を定める為の補助線のことで、「コントロールハンドル」と呼ばれている。Inkscape 等のドローソフトでは、始めにノード(点)を描いてから、このコントロールハンドル(青線)の長さや角度を調整することによって、直線や曲線で構成されたオブジェクト(図形)を作成することができる。

*今回の解説では、この補助線を「コントロールハンドル(青線)」という表記に統一した。尚、Adobe 社の Illustrator では「方向線」と定義している。

ノード(点)を描く際のポイントは、突き出た所や奥まった所などを図形の頂点に指定することである。ノード(点)数が最小限であるほど美しい線で構成された図形に仕上げることができる。

8. コントロールハンドル(青線)の修正

自然な輪郭線を得る為に、コントロールハンドル(青線)を調整する。

□7』のノード(点)を選択した状態で、ツールバー2段目の「選択ノードの種類をシャープに」アイコンを選択すると、ノード(点)の□印が◇印へと変わる。

ノード(点)が◇印へ変わると、2本あるコントロールハンドル(青線)を別々に動かす事が可能になる。

コントロールハンドル(青線)の先端についている○印をドラッグして長さや角度を変えることにより、□6から◇7までの曲線を微調整する。尚、ノード(点)自体もドラッグすることで移動させることができる。

他のノード(点)も適宜調整し、猫の輪郭を形作る。

9. オブジェクト(図形)の面と輪郭線の指定を行う

猫の輪郭が出来上がったら、オブジェクト(図形)をクリックし選択した状態で画面上の「オブジェクト」メニューより「フィル/ストローク...」を選択する。

「フィル/ストローク」パレットが表示されたら、「フィル」のタブで面の色指定を行い、「ストロークの塗り」のタブでは線の色と太さや形状の指定を行う。

*この解説では「フィル(面)」「ストローク(線)」という表記を用いた。

10. フィル(面)とストローク(線)の色指定

「フィル/ストローク」パレットにあるタブの内、「フィル」と「ストロークの塗り」タブでは、「塗りつぶしなし」「単一色」「線形グラデーション」「放射グラデーション」「パターン」の5つの色指定を行うことができる。

今回はベタ塗りの絵を作成するので、タブ直下の「単一色」アイコンを選択する。

次に色の種類を決定する。Web上で使用する場合は RGB タブを選択し、各色のバーを適宜動かして色を決定する。

『R、G、B』に続く『A』という4つ目のバーは、アルファチャンネル(透過度)を司っており、数値が255ならば不透明、0ならば透明になる。今回は 255 に設定した。

輪郭の指定

フィル(面):単一色 #eac095ff
ストローク(線)の塗り:単一色 #555555ff

11. RGB16進数の値を指定して色を塗る場合

「フィル」のタブ内にある『RGBA:』の欄には、直接 RGB を16進数の値で入力することが可能である。活用方法としては、WEB色見本 原色大辞典や、Mariのいろえんぴつ等の色解説サイトから探してきた色名をコピペすることで、色合わせの手間を簡略化することができるが、その場合は末尾に必ずアルファチャンネルの値である「ff」などを付加しなければならない。

*例:赤色 #ff0000(RGB) → #ff0000ff(RGBA)

**今回の作成例では使用しなかったが、フィル(面)やストローク(線)をぼかしたり、透明度を変更する場合は、「フィル/ストローク」パレット下部にある「ぼかし」と「マスター不透明度」を指定する。

12. ストローク(線)の太さと形状を指定

「フィル/ストローク」パレットにある「ストロークのスタイル」タブでは、ストローク(線)の幅、結合状態や端点の形状、線種と点線パターンの選択、矢印等を設定する事ができる。

輪郭の線分の指定

  • 幅:3px
  • 結合:丸結合
  • 端点:丸
  • 点線:直線
  • 始点マーカー:なし
  • 中間マーカー:なし
  • 終点マーカー:なし

13. オブジェクト(図形)の拡大縮小と回転

新規レイヤーを作成。「face」と名付け、ベジェ曲線を用いて目の輪郭を描く。

目玉の指定

  • フィル(面):単一色 #ffffffff
  • ストローク(線)の塗り:単一色 #555555ff
  • ストロークのスタイル:輪郭と同じ

猫らしい目になるよう、描いたオブジェクト(図形)を回転させる。画面左にあるメニューアイコンの上から1番目「オブジェクトを選択/移動/変形」を選択。

オブジェクト(図形)をクリックすると選択され、目玉の周囲を⇔マークが囲む。また、⇔マークをマウスでクリックし、上下左右へドラッグすると拡大/縮小を行う事ができる。

再度オブジェクト(図形)をクリックすると上下左右の角にある⇔が曲がり、オブジェクトを回転できるようになる。

14. オブジェクト(図形)をコピーして鏡面反転させる

目玉を選択した状態で、画面上にある「編集」メニューから「コピー」を選び、同じく「編集」メニューから「同じ場所へペースト」を選択する。

すると、完全に重なってしまって目視することはできないが、元画像と同じ場所に画像がペーストされる。

続けて、「オブジェクト」メニューから「水平に反転」を選ぶと、元画像に重なったまま反転するので、矢印キーまたはドラッグして右方向に水平移動させる。

15. ベジェ曲線とカリグラフィ線で顔の細かいパーツを描く

猫の鼻と口元をベジェ曲線を用いて描く。ベジェ曲線はきれいな線を描く事ができて便利なのだが、やや単調な線になってしまう為、「ちょっとぶちゃいく」な猫の顔を描くには向いていない。そこで、猫の表情を決定付ける目玉とひげは、カリグラフィ線を用いてマウスで描くことにする。

画面左列の下から5番目にある「カリグラフィ線を描く」アイコンを選択。ツールバーの2段目に出現した設定項目を「幅:10、細くする:0、角度:0、固定度:0、Caps:0、震え:0」と指定して目玉等を描いた。失敗しても、Ctrl+z で戻るか、ツールバー1段目の「最後の操作を元へ戻す」アイコンをクリックして前の画面へ戻って描き直すことができる。

*カリグラフィ線の「幅」はピクセル指定ではなく、画面の倍率に反比例した幅の基準であり、画面の倍率100%の状態で描いた線と50%の状態で描いた線では太さが異なるので注意が必要。
**カリグラフィ線については未検証の部分が多いので、後日改めて解説したい。

閑話休題. ベジェ曲線で手描き風の絵を描くコツ

ベジェ曲線のみで絵を描く際には、左右を少しだけ非対称にすると手描き風の味わいが出てくる。

コピペで複製したパーツも、傾きを少し変えたり、形を多少歪めると描き手の個性が表れる。

左図は、額が狭いやぶにらみの猫になるよう調整したサンプルの絵。うっすら汚らしい野良猫がなんとなく愛想笑いを浮かべているように見えないだろうか?

16. 文字を入力する

「text」と名付けた新規レイヤーを作成する。左列の下から4番目にある「テキストを作成/編集」アイコンを選択し、文字を入れたい部分をドラッグして指定する。

次に、ツールバー1段目にある「フォント、フォントサイズ、その他テキストのプロパティを表示/選択」アイコンを選択すると、「テキスト/フォント」パレットが表示されるので、「フォント」タブを選択して、フォントの種類、太字や斜体などのスタイル、サイズ、配置、行送りを設定し「Apply」ボタンを押した後、「テキスト」タブを選択して文章を入力、「Apply」ボタンを押せば指定したフォントで入力することができる。尚、今回は日本語に Osaka フォントを使用した。

*Inkscape 0.45.1 for Mac OS X (Universal) は日本語の縦書き入力に対応していない。どうしても縦書きをする場合は、一文字毎に改行する必要がある。また、カギ括弧なども反転しなければならない。さらに、ヒラギノフォントのように内部書類のフォント名が日本語表記されているフォントは指定できないことがある(←対応方法は法的に問題があったので非公開)。

17. 文字色を変えて変形させる

文字色を変えるには、文字を選択した状態で、画面上の「オブジェクト」メニューより「フィル/ストローク」を選択し、フィル(面)の色を設定する。その際にストローク(線)の塗りとスタイルをも指定すると、縁取り文字になる。

また、文字を選択した状態で、画面下にあるカラーパレットにある色をクリックしても文字色が変わる。

縦長や横長等、不定形に文字を変形させる場合は、『13. オブジェクト(図形)の拡大縮小と回転』と同じ手順で文字の拡大縮小ができる。

文字を入力したら、画像と文字、背景色等のバランスを考慮しつつレイアウトを整える。

18. 原本を保存する

「ファイル」メニューの「保存...」を選択するか、ショートカットキーの Ctrl + s を押すと、「保存するファイルを選択」ウィンドウが出現する。

名前と保存する場所を指定した後、通常は「Inkscape SVG (*.svg)」を選択して保存。今回は「hotcat.svg」と命名して保存した。

19. ビットマップ画像として保存する

JPG等のビットマップ画像として保存する場合は、画面上の「ファイル」メニューより「ビットマップにエクスポート...」を選択する。

「ビットマップにエクスポート」ウィンドウが表示されたら「ページ」タブを選択し、画面中央にある「ビットマップサイズ」の幅、高さを指定した後、保存場所を指定するため「参照...」ボタンを押す。

20. 保存場所の指定

「参照...」ボタンを押すと「エクスポートするファイルを選択」ウィンドウが現れるので、『Name:』欄で画像名を「hotcat.jpg」として、保存場所をデスクトップに指定した後「Save」ボタンを押す。

Inkscape の「ビットマップにエクスポート」ウィンドウへ戻る。

21. JPG 画像を保存

何故か画像名に「.png」という拡張子が付いているので、JPG で保存する場合は「.png」を消してから「エクスポート」ボタンを押す。

保存状況を表す小さなプログレスウィンドウが表示されて、問題がなければデスクトップに JPG 画像が保存される。

22. できあがり

できあがった Inkscape 画像。
う〜ん。プチ・ブチャイク!

蛇足だが、Yellow Dog Linux と Mac OS X の X11 という2種類のプラットフォームで Inkscape を操作した結果、Yellow Dog Linux の方が早く動いて操作が楽だった。
特に、300%以上に画面を拡大してコントロールハンドル(青線)を動かす作業が多い場合、Power Mac G4 733MHz に OS X と Incscape では荷が重すぎるようだ。